今回はインプライドオッズとエクイティについて考えていこうと思います。インプライドオッズとは、ポットに投入する金額と勝てばリターンされる金額が、勝率に合うかどうかを計算したものです。エクイティとは株の世界では株主の所有者利益のことを表しますが、ポーカーの世界ではゲームに参加している人が各々手の強さやアクションからポットの配分率がどれくらいかを計算したものです。では早速見ていこうと思います。
例1)
これがプリフロップ前の状況設定です。私のポジションはD(ディーラー)で、3♣、5♣のワンギャップスーテッドコネクタが配られました。決して強いカードではないですが、ドミネイトされにくいカードです。プリフロップでU(アンダーザガン)はフォールド、H(ハイジャック)は$0.32をベット、C(カットオフ)はフォールド、私が$0.96へレイズ、S(スモールブラインド)、B(ビッグブラインド)がフォールド、Hがコールしました。
これがフロップの状況です。私にはオープンエンドストレートドローとバックドアフラッシュドローがヒットしました。相手はチェックしてきました。ホールデムマネージャーのデータでは、VPIP42でフィッシュマークがついています。相手が♦のフラッシュドローなら話は別ですが、その確率は低くターンかリバーでAか6が落ちたらほぼ勝利をものにできそうです。ではその確率を求めてみます。
ホールデムで使われるカードは52枚、今分かっているカードは5枚で、残りの47枚(相手のカードも未知なのでここに含む)にAと6の計8枚のカードは含まれています。逆に言うと39枚がAか6以外のカードということになります。よってターンでストレートが完成しない確率は39/47。ターンでストレートが完成しなければ未知のカードは46枚になり、その中の38枚がAか6以外のカードということになり、よってリバーでストレートが完成しない確率は38/46。以上よりターンでもリバーでもストレートが完成しない確率は39/47・38/46。余事象の考え方からターンかリバーでストレートが完成する確率(Aか6が落ちる確率)は1-39/47・38/46≒0.3145となり、ほぼ30%。つまりショーダウンまでいけば、フロップの時点では勝率は30%といえます。よってターンとリバーでポットに投入する金額がリターン額に占める割合が30%を切れば、オッズは自分にとって好都合なものと言えます。
実際には相手がフォールドする可能性も小さくなく、エクイティで見たらターンとリバーでポットに投入する金額がリターン額に占める割合が40~50%くらいはあっても長期的に見たら元は取れそうです。このようにポーカーのエクイティとは完璧に計算できるものではなく、不確実な推測された変数を含んで計算されます。これは相手のタイプや相手のハンドの強さという、不明確な事象も考慮しなければならないからです。そこで私は$1.28をベットしました。これはフォールドされてもコールされてもどちらでもいいという微妙な額(ポットの6割相当)です。相手はコールしてきました。
これがターンの状況です。オープンエンドストレートドローに加え、バックドアフラッシュドローができました。Aか6か♣が落ちれば勝利をものにできそうです。相手はまたもチェックしてきました。ではリバーでAか6か♣が落ちる確率を求めてみます。
A♥、A♦、A♣、A♠、6♥、6♦、6♣、6♠、4♣、8♣、9♣、T♣、J♣、Q♣、K♣は全部で15枚。未知のカードは46枚よって15/46≒0.326ショーダウン勝率は約33%で、3回に1回は勝てる計算になります。
そこで私はポットの2倍近い$8.77をベットしました。相手がコールすればリターンされる金額は4.72+8.77×2=22.26投資リターン比率は8.77/22.26≒0.394。約40%でインプライドオッズをやや上回る比率ですが、フォールドエクイティを考慮すればこのくらいでもいいと思います。
結局相手はフォールドして私がポットを勝ち取りました。ポット相当のベット額でしたら相手にコールされ、リバーで何も落ちないという可能性も低くはなかったと思います。フォールドエクイティをものにできたということになります。このようにフォールドエクイティを考慮すると、インプライドオッズに合わないベット額でも長期的に見ると利益が出そうです。
例2)
これがプリフロップ前の状況です。Uがフォールド、Hが$0.48でレイズ、Cがフォールド、Dの私がコール、SとBはフォールドしました。ちなみにQ、Jスーテッドではレイズも有力だと思いますが、ポジションがある時はコールでフロップを見にいくのも全然ありだと思います。
これがフロップです。フラッシュドローとガットショットストレートドローができました。ここで相手は$0.72をベットしてきました。どうもKがヒットしているみたいです。さてターンかリバーでドロー(Tか♠)を引ける確率を求めてみます。
ドロー(アウツ)は3♠、4♠、5♠、6♠、7♠、8♠、9♠、T♠、T♣、T♦、T♥、A♠の12枚。未知のカードは47枚よりアウツ以外のカードは35枚。よってターンでドローが引けない確率は35/47。リバーでもドローが引けない確率は34/46。ターンでもリバーでもドローが引けない確率は35/47・34/46。余事象よりターンかリバーでドローが引ける確率は1-35/47・34/46≒0.44958。つまりほぼ1/2の確率でドローは引けることになります。2回に1回勝てるならショーダウンしても長期的に見たらトントンなので、ここはフォールドエクイティで利益を最大にしたいためセミブラフを決行することにしました。インプライドオッズを考えると、オールインまでいったとしてもポットの$1.2分得する勘定になります。私は$1.44へレイズし、相手はコールしてきました。
これがターンです。フロップのコールより、相手はKを持っていることを確信しました。
ターンでJ♥が落ちましたが、あまり喜べたカードではありません。(ワンペアなら相変わらず現状では負けていそうだし、相手にもドローの目ができた可能性が高いから。)相手はチェックしてきました。ここでリバーでドローが引ける可能性を求めてみます。
ドローは先程の3♠、4♠、5♠、6♠、7♠、8♠、9♠、T♠、T♣、T♦、T♥、A♠に加えてJ♣、J♦の14枚に増えました。未知のカードは46枚よりドローが引ける確率は14/46≒0.304347。ほぼ30%です。
インプライドオッズを考えるとここはポット以下のベットが望ましいようです。私は$2.80をベットしました。相手はコールしました。ちなみにインプライドオッズは(ポットの金額+自分がポットに投入する金額+相手のコール金額)/自分がポットに投入する金額:1で表され、(4.08+2.8+2.8)/2.8≒3.457より3.457:1ということになります。ブレイクイーブンパーセンテージ(BEP)は1/(3.457+1)≒0.224366。よりBEPはほぼ22.4%です。これは勝率が22.4%あれば長期的に見て、利益は±0になるということです。勝率はほぼ30%なので、ターンだけ見ても十分に利益は出るプレイといえそうです。
これがリバーです。いよいよ待望のドローが引けました。相手はまたもチェックです。相手がA♠、X♠でない限りはナッツです。私は引き続き$5.24をベットしました。相手はコールしてきました。
相手はK♥、Q♦を開き、私がポットを勝ち取りました。
これは上手くいき過ぎましたが、仮にインプライドオッズが合ってなかったとしても、フォールドエクイティとアウツを引いた時に得られる金額が大きいと見込めれば、やはりポットにお金を入れていく勝ちは十分にありそうです。