蒼海館の殺人 (講談社タイガ)
著者:阿津川辰海
発行者:渡瀬昌彦
2021年2月16日初版
ジャンル:ミステリー
あらすじ
高校2年生の田所は同級生の三谷と、落日館の件より学校に来なくなった葛城輝義(名探偵)を訪れるため、郊外にあるY村の高台の本邸に行きました。葛城家ではおじいさんの惚太郎の法事が行われるところで、葛城一族と訪問客数名が一同に会します。葛城一族は、輝義の父が政治家、母が物理学の教授、姉がトップモデル、兄がキャリア警察官、叔父が弁護士と煌びやかな一族です。
惚太郎は毒殺されたらしいという疑惑から始まり、次々と殺人事件が起こります。台風で曲川が氾濫し、Y村は水没し、葛城家まで濁流は押し寄せてきます。このまま水に飲み込まれれば探偵も犯人も全員死ぬという状況です。一度は真実を追求することを躊躇った輝義は目覚めて、家族と順番に対話します。その先に犯人はいるのですが、真相はより複雑でこの事件を操っていた黒幕が登場します。
ネタばれと感想
この作者の本は初めて読みましたが、作者は間違いなく綾辻行人の館シリーズの影響を受けていると思いました。っていうのは館に隠し通路があったり、描写が似ているところがあるからです。374Pの「僕だからだ。」というところと、十角館の殺人の402Pの「ヴァン・ダインです。」というところが何か似ています。
このミステリーは複雑で2回読まないと、スジが見えてこないと思います。正直2回でも全て把握したとは言い切れません。トリックとしてはミステリーにありがちですが、少し卑怯な部分もあります。196Pの「正の背は低く、黒田と十センチほど差がある。誤魔化しようがなかった。」というところです。この一文はいりません。寧ろなぜ同じくらいの背格好にしなかったのか不思議なくらいです。
ミステリーとしては少し回りくどいところもありますが、構想は雄大で十分読むに値すると思います。尚犯人は当たりましたが、真犯人(黒幕)は分かりませんでした。
誤植
本館見取り図の梓用というのは梓月の間違いです。他にも坂口と黒田を入れ違えているところがありました。
私の評価
ストーリー 4
描写 3
登場人物の個性 4
意外性 5
トリック 3